第3弾「しりとり」のご案内

エッセー集「しりとり」

「まえがき」より

 

 昭和、平成と続き、新たな年号「令和」の年になりました。明治、大正、昭和 を生き抜いた 祖母同様、私も三つの時代を経験できたことになります。

 昨年、二つのエッセー集を出版しました。子ども時代の思い出、ちょっと前の体験談などを書いていく中で、時代を経て、また世代を越えて、同じようなことが繰り返されたり、再びブームが起こったりすることに気付きました。それは「しりとり」の遊びのように、いろんなパターンを経て変化しながら未来へつながっていくのと似ています。

 

        (中略)

 

 遠くなりゆく昭和とその後の街の発展する様子、それに続く平成の日々の暮らしなどを、一緒に思い出したり、想像したりして頂ければ幸いです。

 

 


植えてないのに生えてきた!

 ベランダで朝顔やハーブを育てていた時のことである。近所の植木に止まっていたヒヨドリが、家のプランターに遊びに来た。草抜きを免れた雑草の花びらを食べているようだ。「キィー、キィー」と甲高く鳴くので、来たらすぐわかる。ここが気に入ったのか、散歩のコースなのか、同じ鳥がたびたび来るようになった。

 久しぶりに雑草を抜こうとプランターを眺めていると、少し長めの草が生えている。何だろうと思って取ろうとしたが、抜けなかったので、そのままにしておいた。何日か経って見ると、ますます丈が長くなっている。不思議なので、成長を見守ろうと思った。茎はニョキニョキと大きくなって、木の様相を呈してきた。

 「何か判らないけど、木が生えてきた!」 と、家族に触れて回った。苗木を買わずに木が生えてきたので、得をした気分になった。しかも、淡い緑色の、涼しげな葉っぱが美しい。

 「植えてないのに生えてきた!」 二十センチくらいの高さになったので、プランターから庭に植え直した。我が家の他の植物同様、土の状態に合っていたら順調に育つだろう。知らない間に消え去った草木もたくさんあったが……。

 そのまま放っておいて、時おり水や肥料をやった。気が付くと、木の丈は五十センチを越していた。無事に大きく育っているようだ。時々、剪定をしたり雑草を抜いたりした。枝や葉の形から、どうやらザクロの木みたいだ。次の年、可愛らしいつぼみがあるのを見つけた。赤くて、小指ほどの大きさだ。そういえば、家の裏にもザクロの木があって、毎年実を付ける。諸説あるが、子孫繁栄のシンボルで、外国でも栽培され、いろんな文様に使われているそうだ。何より嬉しいことに、ザクロの実は、食べることができる。

 「キィーーッ」 頭の上で鳥が鳴いた。そうか、あの時のヒヨドリさんは、ザクロの実をついばんでいたのだ。家のベランダに寄ったついでに、嬉しい置き土産を残してくれたようだ。                                     © 風見鶏企画